二人のピーターとジャック。

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急な気温の変化で、三寒四温を実感のこの頃

さて先日、新宿駅の南口に行き、久しぶりに駅構内の本屋さんに目が止まりました。

そう云えばこの本、随分以前も置いてあった様な気がします。

なぜ記憶に残っていたのかって?・・

それは題名が「ピーター・フォーク」とあったからで、単純に映画好きの私の事、

以前この本を目にした時から、

この題名が脳裏を離れていなかったのです。

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ピーター自身で描いた表紙画の「Just  one  more  thing 」と題した厚めの本。

刑事ドラマの展開を考えると

「もう、ひとつお聞きします。」とでも訳しましょう。

コロンボが目をつけた容疑者にベッタリくっ付いて、しつこく質問するお得意のセリフ。

まだ、PCもケイタイも普及していない時代のストーリー、

恐縮そうで、とぼけている様で、それでいて鋭い観察力。

そんなコロンボ演じたP・フォーク。

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もう故人となってしまった彼の自伝的、厚めの本。

随分以前からこんなに人通りの多い新宿駅構内書籍なのに

誰にも見向きもされず、棚の端っこに追いやられ

時が経って、忘却のスターとなってしまったピーターが何となく気の毒で

今度、見つけたら絶対と決めていた以上、即、購入。

大衆の中に紛れ込んで目立たない、しかしその目はじっと「こいつだな」と

目を付けた容疑者の動きを見逃さずブッシュの中に潜んで獲物を見つめ

最後の猛チャージで追い詰めるチーターの様なコロンボ

しかし(超ダサイ)と言う(現代若者用語)が当てはまる彼のファッション。

チーターとは、ちょっとスマート過ぎて飛躍し過ぎかも知れません。

 コロンボの愛車フランス製プジョー。撮影所で一番ダサイ車と

自宅に在ったダサイコートを、自ら選んだそうで彼の役作りのこだわりが分かります。

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普通のミステリー話では、事件が起きると容疑者が5~6人はいて

視聴者はその中の誰が真犯人かと、あれこれ想像をする。

そんな展開であれば、最後まで観てもらえるから作者もTV局も安心で

視聴者もいったい誰が犯人なのかと、ワクワクしながら観る事が出来る。

しかし刑事コロンボは、そうは行かなくて最初の5分間で殺人犯

次の10分でその犯行手口が解ってしまうのです。

そうなると、視聴者が待つのはただ一つ、コロンボがいかに犯人を追い詰めるか。

犯人をあげる決定的瞬間までのハラハラドキドキ感をハイにさせなくてはならない。

「 この犯行から逮捕までの後の100分は、視聴者を釘付けにする演技力が必要となる。」

と、彼は説いている。

粘りこく犯人を追い詰める演技が出来るのは、彼のユニークな経歴にもあると思う。

17歳でハミルトン大学へ進学したものの

案の定、初日からのキャンパスライフに「将来の自分」を模索。たったの3ヶ月で退学。

幼い頃の病気で片目が義眼となっていた為、徴兵の対象外となり船乗りに。

船上での仕事はポークチョップを作る第3コックで

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大西洋を横断し2千人の兵士を迎えにフランスのマルセイユへ。

帰りも担当レシピはポークチョップ。これではいけないと、又、大学へ。

今度は政治学と文学を学び、演劇にも出会ったのだとか。

コネチカット州の予算管理局で効率考査官となり、デスクワーク後は劇場へ向かい

衣装を着けてアーサー・ミラーなどの作品を舞台で表現していたピーター。

ここから、彼の演劇人生がスタートした訳なのです。

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ピーターの作品。まるで、画家ドガを彷彿させる様なデッサン。

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ゴルフとデッサン力は、かなりの腕前だった。

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今でも「やぁーコロンボですが・・」なんてヨレヨレのコートで申し訳なさそうに

道の角から、現れそうな不思議な役者。

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名セリフ「うちのかみさんがねー」の

ピーターのワイフ、明るい性格。女優のシェラ。  

刑事コロンボ」にも仲良く出演。

 P・フォークとコロンボは、Wって見える錯覚を起こします。

これほど、世界中に親近感を持たせた役者も珍しい。

 今さらフォーク氏の経歴を知ったところで、どうと云う訳でもないのですが

若き時代に、こんなにユニークな経験を積んで来た事が、人を引き付け

人間味溢れる役をこなせる基礎となったのかも知れません。

晩年、彼は認知症にかかり、ハリウッドの大通りをふらついている所を撮られ

YouTubeで世界中に発信されてしまいましたが、

「今まで世界中の人達を楽しませてくれた役者ではないか!あんまりだ!」と

コロンボをこよなく愛すファンから、この心無いパパラッチは非難されたのです。

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自伝発売で嬉しそうだったピーターさん。

私、ついフっとつぶやきました。

「良い仕事しましたね。どうぞ安らかに・・」

 さて、ピーターはピーターでも、もう一人のピーターがこの方。

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名優ヘンリー・フォンダの長男、ジェーン・フォンダの弟で60~70年代に活躍した人。

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父・ヘンリー・フォンダ

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若き日の姉ジェーン・フォンダ

世にも怪奇な物語」では弟ピーターと共演しています。

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米映画「イージーライダー

相当、大昔の作品ですが名優H・フォンダの息子だと云うので

デビュー当初から注目されていましたが

イマイチぱっとしないのが、悲しき親の七光り。

こちらのピーターは、コロンボのピーターとは違い苦労知らずの、おぼっちゃま。

偉大な俳優の親を持つと、周りからのプレッシャーも、まま成らないはず。

 しかし、「イージーライダー」の制作、脚本も共演の故デニス・ホッパーと手がけ

テーマ曲「ワイルドで行こう」と共に、映画は世界中を駆け巡り大ヒット。

世界中での興行収入は6千万ドル以上となったのです。

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1965年型ハーレーダビットソンにまたがり、

カリフォルニアからニューオーリンズまでのロードムービーは当時の若者用語

(カッコイイ)その物でした。

今では、(超イケテル)なんて言うのでしょうか。

 ぱっとしなかった七光りの青年は、この作品により光輝いたのです。

 今やワシントン州コロラド州で大麻の売買を合法化した経過がある米国ですから

このストーリーの様な結末が起きても珍しく無いのかもしれません。

この作品が発表された当時は、私はまだ学生。

学業優先で、映画館などでうろつく身分でもなく友人が観て来て

開口一言「P・フォンダのまつ毛が長くてステキだったー」

との感想だけは記憶しているだけ。

 アカデミー賞受賞の父と姉には及ばなかったのが残念なピーター。

しかし、この作品でニューヨーク映画批評家賞などにノミネートされ

アメリカン・ニューシネマの代表作となり、

各賞にはノミネートで止まったものの

アメリカ国立フィルムには永久保存登録される栄誉を受けたのです。

 そこで何となしに、懐かしく「イージー・ライダー」を鑑賞。

ステッペン・ウルフのワイルド感たっぷりの軽快なリズムに、圧倒され

映画公開当時に戻った様な気がします。

 仏映画の方が好みなのですが、久々のアメリカ物は珍しくちょっと新鮮に感じます。

 こう云うストーリーの中には、必ずちょっとした変り者が出て来るのですが

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変り者に適役で、田舎の新米弁護士の役が、ジャック・ニコルソン

イージー・ライダー」に出ていた頃は、まだ痩せていて今の様なメテボでもなく

目鼻立ちがきつくて、外見からも可なり強烈な印象でした。

セリフだって、そんなに多くもないのに

主役のP・フォンダの存在を霧にまいてしまいそうな威圧感が有ります。

 尖がった眉、きつい吊り上がった目、左右に裂けた様に開く口。

この人、正にスティーブン・キングのホラー物や

ヒッチコックのミステリー物がぴったりのキャラ。

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このポスターの表情、強烈かつ睡眠障害を起こしそう。

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と思っていたら、やっぱりS・キューブリックの「シャイニング」で、キャラは本格化。

まれに見る恐怖と戦慄の世界を表現しております。はっきり言って

 ホラー物の容疑者をやらせたら、この人の右に出る方は居ないのではないでしょうか。

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 正に怪優。でも何故か憎めない、つい微笑んでしまう得なキャラの持ち主。

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彼は1937年生まれですから、現在77才のはず。アメリカンなお食事のせいか

体形はメタボそのもの、たぶん血管年齢はそれ以上ではないかしら。

彼もまた「最近はセリフ覚えが悪い」との発言があったとかで引退?との噂もチラホラ。

真実ならば、存在感の在る役者がまたスクリーンから消えて行く訳です。

フォンダやニコルソンも「自伝」を出版したら、今度は即、購入する事にしましょう。

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なんて、ふと思ったりして小春日和の映画鑑賞は終わり

二人のピーターとジャック。

「楽しませて下さって有難う。」と言いながら

時代の流れを、つくづくと感じたのでした。

ではまたね。