ロシアのS・ホームズ
お気に入りのTVチャンネル(AXNミステリーch)
この1月はサー・アーサー・コナン・ドイルがS・ホームズを世に出した月だとかで つまり探偵ホームズの誕生と云う訳で
新年に先駆けロシア版の「シャーロックとワトソン」を放映していた。
シャーロックの生みの親ドイルは、これほど人気を得るとは思いもしなかった。
とは有名な話で
むしろ、「シャーロックを書くのは、おっくうだった」と
ロンドンの(シャーロック・ホームズ協会)でも知る人ぞ知っている訳だ。
しかし、この探偵小説は作者の思惑を無視し
世界中にS・ホームズの名を知らしめてしまった。
日本国内でも(日本S・ホームズクラブ)などが有るほど
つまり、どんな難事件でも解決してしまう、こんな人物を大衆は必要としている訳だ。
しかしドイルは早くシャーロックの執筆を止めたいが為、
シャーロックを宿敵モリアーティー教授と共に滝壺に落とし
この世を去る展開にしてしまった。
これを読んだ読者ファンの余りに強烈な要望から
生きて再登場するストーリーへ変えている。
幼い頃に、誰でも一度は読んだ事があるこの英国ミステリーだが
作者ドイルが、自分で生み出したホームズを嫌っていたとは悲しい。
元々、ドイルは恐竜の出てくる様なアドベンチャーな小説を好んで書いていたし、
まあ、最終的には読者が満足する様、ホームズは探偵業を引退し
穏やかな老後を過ごす様にストーリーを方向転換した訳だ。
ドイルがサーの称号を得たのも、この探偵シリーズの人気の為では無く
別物「南アフリカの戦争」についての執筆によるもので、納得がいく。
これぞ英国グラナダTV版シャーロック
さて、ホームズと云えばこの英国俳優
故ジェレミー・ブレットの顔が直ぐ浮かぶ位、定着していたが
今回初めてロシア版を観ました。
このロシア版では原作に忠実なのには、驚かされます。
ホームズの住居があるベイカー街221Bの街並みや、当時の服装
それにホームズの部屋の散らかし具合など、全てが原作通りである事。
以前20代の後半だったか、北極回りのアンカレッジ経由で
このベイカー街を訪れた事があった。
ミステリー、映画ファンの私 思いたったら直ぐ行くのだ。
この221Bのアパートは文字通り保存されていて博物館になっていた。
博物館とは云っても、極、狭い部屋でホームズが生活していた通り 雑然とした雰囲気を残していて
ミステリー本の好きな旅人たちが部屋中にあふれていた。
こんなに雑然とホームズの私物を置きっぱなしで
マニアックな方は持って行ってしまうんじゃないかしら・・しかし
そこは、ホームズファン。紳士淑女な方達でコナン・ドイル氏の名作を
傷つける様な真似は致しません。静かにストーリーを思いだし
考え深げでありました。
当時は「ホームズゆかりの地」を訪れるミステリーツアーなんかが有ったのですが
今はどうなんでしょうか。
さてロシア版のシャーロックなのだが、これがまた素晴らしく、まるで
「本家英国で撮影したのか」と錯覚するほどの出来栄えなのだ。
1979~1986年までソ連のレニングラード(サンクト・ペテルブルグ)での撮影
19世紀末のヴィクトリア朝時代の街並み、服装全てを再現している
ルノアールの絵の様な当時流行のドレス。
さすが国営テレビの技。
19世紀の末と云えば、日本では大日本帝国憲法が発布されたり
なんとこの頃、やっと市町村制になった時代。
パリではエッフェル塔が出来たり
ブラジルでは共和政治になったりの時代。
この頃の世界の縮図は、これ位しか知らないが
こんな時代を、もろともせず再現している。
この頃のイギリスはと云えば、生産々で品物の原料を得る為
世界を、特にアジアなんかを植民地化する策略も見え隠れして来た時代だし
それを物語っている場面が、豊富に出て来る。
例えば、相棒のDr.ワトソンが東方帰りの軍医と云う事で
アジアで仕留めた猛獣のはく製を飾る場面などがあったりする。
つまりワトソン氏は復員兵であると云う設定。
「君は東方の戦争に従事していたね。」などと
ホームズは初対面でワトソンの仕事を言い当てたりする。
馬車が自動車に変わり、手紙や電報が電話機へと変化し
街のガス灯が電灯へと変わり行く19世紀末
面白いのが、文化の変化を物語っているこの場面。
シャーロックが同居の友人Dr.ワトソンに、電話機の使い方を伝授されている光景。
「もう、電報の時代じゃないよ、電話はこうして使うのさ。」
なんて教わるシャーロックが、何とも無邪気で可愛い。
「うんうん、聞こえるな・・」
「・・だろう」
このロシア版シャーロックを演じているワシーリー・リヴァーノフと云う方だが
正統派ホームズで、ダミ声と背丈と鼻の形以外は、ほぼパーフェクトホームズに近い。
エリザベス女王や英国国民も大好きだったという事で
なんとリヴァーノフは本家英国より「大英帝国名誉勲章」を授与された。
エリザベス女王もお気に入りであったと云うこの「ロシア版」
Dr.ワトソン役のヴィターリー・ソローミン、
221Bの大家さんハドソン夫人役のリナ・ゼリョーナヤなど
皆、適役を得て画面はやや暗いが、世紀末らしいセピア色の映像。
音楽も重厚でかつ、心に残るオーケストラのサウンド。
古い蓄音機も健在。
ここから聞こえる様にしてある。
ロンドンの博物館では、このロシア版の方のサウンドトラックが流れていて驚いたが
誰でも、英国版より好むと思うし
いかに、英国国民に愛されているかが解る。
何度も鑑賞したくて
女王様には、おおそれながらも私、今年初のDVD購入は
このロシア版「シャーロック・ホームズとワトソン博士の冒険」
となった次第なのです。
ではまたね。