流れ星
外で少しだけ飛び回っていたら、あっと云う間に2月も半ばを過ぎてしまいました。
この夏には引越しが待っております。
老後にはまだ早いけれど、今のうちにインフラなんかを考えれば
かなり便利な場所だと思うのです。
靖国神社や武道館も散歩するには丁度良いし、緑も適当に在るし。
お気に入りの鰻屋さん「志満金」も、散歩がてらにちょっと寄ったり
ベランダから階下を見下ろせば、春にはお花見も出来るし。
コンセルジュに頼んでおけば、旅の間も安心で
怠慢な私には、ぴったりの住みかだと思うのです。
初夏の完成を待って、人生最後の転居となるでしょう。
なので、まだ早いと思っても、今のうちから要らない物は処分処分、大掃除。
すると
WOWOWで以前録画したDVDも出て来ました。
ロバート・ミッチャム主演のかなり古い映画「マーロウ」シリーズ。
原作は米国のハードボイルド作家、レイモンド・チャンドラーの探偵物。
チャンドラーってアメリカの北方謙三?・・いや生島治郎に近いかも知れません。
平成生まれの今どきの若い方々に「ロバート・ミッチャムって知ってる?」
とお聞きしても、99%の確立でNOと答えると思うのです。
かなりの探偵物オタクの方か、古い映画ファンで無い限りYesとは答えないでしょう。
私ですら、今回大掃除でもしなければ、生涯、忘れていたと思います。
(別に 思い出さなくても、誰にも何の影響も及ぼさないけれど)
実際、こうして古い映画が見つかると、ちょっと気になって
処分する前に、少しばかりのお情けとクセで、観てしまいます。
探偵物は好きですが
以前ハンフリー・ボガード主演のマーロウ物を観てウトウトと寝てしまったし
今回出て来たDVDは、ボガードのリメイク版。
ミッチャムと云うこの方ですが
ハリウッドでは、どの位の位置にいる俳優であったかは不明です。
C・ヘストンと「ミッドウェイ」で共演しているポスターを
去年だったか「映画図書館」で見つけましたが
ミッチャムは、右端のヘンリー・フォンダより一番後ろに描かれています。
左端に、かろうじて、はみ出さずにいるのがミッチャム。
顔が半分でかわいそうですね。
厳しいハリウッドでの人気と、実力者の格差を物語っているポスター。
この写真から想像すれば、ミッチャムはハリウッドでは、期待されてはいるが 真ん中のチャールトン・ヘストンの様な
スーパースターであった訳ではない事を、物語っています。
「エル・ド・ラド」ではJ・ウェインの影になり
「帰らざる河」ではモンローのドアップに負けて
「さらば、愛しき人よ」でもランプリングの後ろを固めて
大昔はレコードまで、出していたんですね。しかし
聞いた事も無いし
知らないうちに日本映画にも出稼ぎに来ていらした様で
これも又、お若い頃の高倉健でしょうか。
岸恵子さんとも共演したりしてたんですね。
怖いお兄さん総出のV物は観ない主義なので、スルーしますが、
さて、興味深いのは、この探偵物「マーロウ」の中に、今はスーパースターとなった
シルベスター・スタローンが、ちょい役で出ている事。
まだ初々しい青年時代で「ロッキー」でブレイクする前の段階。
スタローンは、自分で「ロッキー」の脚本を作り映画会社に売り込んだ兵。
ミッチャムや他の役者を追い越そうと
この頃からメラメラと野心に燃え、構想を練っていたに違いありません。
古い映画の鑑賞時は、こうやって若き日の「誰かさん」を見つける方が面白い。
例えば、B・デイビスの「イヴの総て」には、デビュー直後のモンローが出ていて
彼女も、「次は私が主役よ!」と野心丸出しの
虎視眈々とトップを狙っている表情が、もろに出ております。
ハリウッドの空に炎々と、そして永遠に輝く星になるのは、ほんの一握りの役者だけ。
その中で、やっとの思いで主演を勝ち取っても、
TCL・チャイニーズシアターに、手形を残す名誉をゲット出来るのは、
そのまた、ほんの一握りのスターだけ。
ハリウッド大通りに、名前と共に刻まれる事も無く
翌日は流星の如く消えている一瞬だけのスター
何処かの草原に消えて行く、「流れ星」の方が多い。
それがハリウッドと云う舞台なんでしょうね。
そんなこんなで、引越しするその日まで
古い映画の中に「若き日の私は誰でしょう?」の答えを見つけたりの
まったく無意味で「何の為にもならない時間」を過ごし
現住居での生活を惜しみながら、映画三枚の日々は
また過ぎていくのです。
ではまたね。