モローのモノクロ作品。
近頃は、なんだかんだと出歩くので
あんなに続いていた映画鑑賞の日々が、ウソの様に減ってしまいました。
それでも、就寝前に眠剤代わりに観たりするのがモノクロの
モノクロの良さって、何となく情緒が有る処ですね。
微妙な現実離れと、少々時代がかったタイムスリップ感覚になれる処。
それに、 なんと云っても、存在感の有るモローの作品。
真のデビュー作「オーケストラ」では役名も付かなかった彼女ですがその後
ほとんどデビュー作と云っても良い
ギャバンと共演の「現金に手を出すな」なんて
初々しくて、ポニーテールが良く似合い、ギャングの情婦役も板についている感じ。
ギャバンとの掛け合いも、なかなか堂に入っている。
逃げる時のハイヒールの足がこける場面なんかは、自然な動作だし
この頃から、後に成功者となる素質は充分有ったのだと思う。
そして、「死刑台のエレベーター」のモロー、これが又、凄く良い。
マダム風の貫禄も出て(への字)の口元が、益々強調されて来た時代。なんと言っても
亭主を愛人に殺させる役だから、恐ろしい。こんな怖いマダムを演じられるのは、
貫禄のモローしか思い浮かばないのはフランスの監督ルイ・マルも心得ていた訳なのだ。
当時若干25才だったルイ・マルとモローは、友人以上の関係であったし。
モローは、この若き監督に多いに期待を掛けていたと思う。
亭主の部下で、エレベーターに閉じ込められるドジな愛人役のモーリス・ロネの必死さや
犯罪解決に闘志を燃やす、刑事役のリノ・バンチュラなども、しっかり脇を固めて
ミステリー物としては永年に渡り、しっかり残っている作品だし、
ヴィンテージ物のオープンカーや、婦人達の当時流行タイトなデザインなどが見れる。
そそくさと歩く姿が何とも御しとやかで、現代では機内アテンダントか
何処かの案内嬢位しか着ていない気がする。
正にケイタイの無い時代でなくては、作れない映画。
さて、次は「エヴァの匂い」と云う作品。
この題名は日本だけの物で他国では「EVA」のみの簡単なもの。
この作品のモローが一番好きなのだが、このエヴァ役も、相当訳ありの秘密めいた女。
そんな悪女の方が、観ていて面白いしワクワクするのですが
役の割りにはちょっと貧弱な容姿。
ガリガリな頬で、目もくぼみ最悪な状態だったらしい。
DVDの解説によると、イタリアでのこの撮影時は体調を崩して
ダウンしていたのだとか。イタリアでダウンと云えば以前、
長い眉毛の村山元総理も、あちらの食事が合わなくてダウンしたし
私事では、昔イタリア旅行の際に、あちらのチーズが油っぽくて腹痛が起きたし
イタリアの代表的チーズpecora。ペコリーノとか言うちょっと辛い味。
羊乳が原料の濃くて、甘味は少しはあるけれど、硬い曲者。
イタ飯は人気があって良いのですが、毎日だとウンザリするのは、万国共通なのかも。
そんな事より、モローの作品、次は「黒衣の花嫁」。この映画は
フランソワ・トリュフォー監督の1968年度のカラー作品なのですが、
それ以前1959年度のカンヌ国際映画祭での監督賞受賞作品である
「大人は解ってくれない」のたった数分だけの出演に、モローを起用し
作品の重厚さをアピールしていたのです。「大人は解ってくれない」は
トリュフォーにとっても、デビューと云える作品なだけに
大物俳優の数分の出演は「効果有り」であったに違いないし
又、彼女の監督を見る目も鋭くて、確実にトリュフォーが
将来的に有望な監督である事を予測していたと思うのです。
モローの予想通りで、後の「黒衣の花嫁」では著名な監督と成った
トリュフォーのシナリオ通りミステリアスな復讐に燃える女を
見事に演じたモロー。
ただ淡々と復讐を果たして行く恐怖。
モローの無表情なアップの顔は、恐怖感を募らせる。
いずれにしても、我がDVDコレクションの半数近くが
フランス物であって、モロー出演の作品が多い。
ギャバンと共演した「現金に手を出すな」から現在に至るまでには
苦難の道も有ったはずですが
彼女が 二十歳そこそこで、お嫁に行く前日に俳優になる決心を捨てきれず
花婿から逃げ出したと言うモロー独特の信念が有ったからこそ
乗り越えて来れたのでしょう。
こんな強力な信念で生きて来た女性は、やはり目が輝いています。
御歳86才の今も現役で活躍し、後輩からも親しまれる彼女の精神力の強さは
魅力的で頼もしいかぎり。
就寝前に、時々取り出しては鑑賞するモノクロ作品の数々
小春日和をウトウトと過ごす、こんな時間も
これからは多くなりそう。
ではまたね。